※今回の記事は2022年4月分金融コラム「コロナ融資の足元返済状況と今後の展望」続編となります。
コロナ融資の返済状況について
コロナ融資の元金返済が本格化しつつあります。
日本政策金融公庫によると、全体の57%が2022年3月末までに元金返済開始、一方で13%は予定通りの返済が難しいとして追加融資や条件変更を申し出たといいます。
また全国信用保証協会連合会のまとめによると、返済不能を肩代わりする代位弁済の件数が7月は前年同月比4割増えています。
長引くコロナ禍に円安進行による資材高など事業環境の悪化も重なり、コロナ破綻はハイペースで増加しています。
そこで今回は改めてコロナ融資の返済と資金繰りを考えてみましょう。
対応策その一:
金融機関への追加融資要請
金融機関からの追加融資については、現状で既に貸し過ぎ感が強く、あまり期待すべきではないでしょう。
全国信用保証協会連合会によると、保証債務残高は7月時点で約41兆円とコロナ前(19年度)の約2倍と異常に膨れ上がっています。
これは日本政策金融公庫の貸付残高も同様です。
コロナ融資の新規受付期限は延長されているものの、既に利用残高のある事業者の借り増しはかなり困難と言わざるを得ません。
対応策その二:
金融機関へのリスケ要請
2013年に中小企業金融円滑化法が期限切れとなった後も、金融機関の中小企業を支援する基本的な方針は変わっていません。
金融庁が公表している以下の資料からは、全国で毎月数万社の企業が金融機関にリスケ要請をしていること、要請すれば99%以上の確率で認められることがわかります。
コロナ融資のリスケ要請も、当然ながらほぼ認められると考えてよいでしょう。
金融庁:貸付条件の変更等の状況について
(対銀行分)https://www.fsa.go.jp/ordinary/coronavirus202001/kashitsuke/2207.pdf
(対信金・信組分)https://www.fsa.go.jp/ordinary/coronavirus202001/kashitsuke/2206-2.pdf
経営者が心がけるべきこと
今後は追加融資に加え、リスケ要請も選択肢の一つとして積極的に考える必要があります。
ところで前回コラムでは「出来る限り早くリスケ要請の判断をすること」を心がけるべきとお伝えしましたが、今回は「リスケ回避の方向に誘導されないこと」を注意点として挙げたいと思います。
金融機関にリスケを相談すると、最初は何かと理由をつけて通常返済の継続をお願いされます。
窓口担当者にとってリスケの申し出を受けることはマイナス面が大きいためです。
貸出債権の質が下がることはもちろん、報告書作成・事業改善計画の検討・保証協会や他行との調整・稟議作成・契約書のまき直し等々、煩雑な事務も発生します。
その為、初動対応としてはどうしてもリスケ回避の方向を模索するわけです。
しかし経営者は金融機関の事情ではなく、自社の生き残りを第一に考えなければなりません。
粘り強く交渉してリスケを受付してもらいましょう。
最近では一度リスケが受付されれば、後は比較的定型的に処理が進んでいくようです。