ネット銀行をメインバンクとする企業の増加

近年、ネット銀行をメインバンクにする企業が増えています。

ネット銀行とはリアル店舗を持たないインターネット専業銀行のことで、楽天銀行や住信SBIネット銀行、ソニー銀行やイオン銀行が知られています。

東京商工リサーチによると、ネット銀行がメインバンクと答えた企業数は2022年は3446社と5年前の2.3倍となっています。

そのトップは楽天銀行で、企業数は1,394社と第二地銀や信金、信組に匹敵する水準に届きつつあります。

これまでは創業時に地元金融機関に口座を開設するのが定石でしたが、この変化の背景には何があるのでしょうか。

企業の銀行取引変化の背景

現在、人工知能(AI)、キャッシュレス決済、リモートワーク等の技術により世界が大きく変化し、デジタルへの移行が加速しています。

金融業界もこの流れには逆らえず、ネット銀行だけでなく、ネット証券、ネット生保、ネット損保がどんどん存在感を増しています。

メガバンクや地方銀行でも、紙通帳の廃止や来店不要サービスの強化などでデジタル移行を進めていますが、やはりサービスの洗練度合ではネット銀行に一日の長があります。

特に若い世代の経営者にはその点が魅力的に感じられ、結果としてネット銀行のメインバンク化につながっていると言えるでしょう。

ネット銀行をメインバンクにするメリットとデメリット

次にネット銀行をメインバンクとするメリット・デメリットも考察しましょう。

~メリット~

1、コスト削減

=送金や入出金の手数料が安い。

2、充実のデジタルサービス連携

=PayPay銀行は決済アプリ大手のPayPayとの連携で飲食店などを中心に法人顧客が増加傾向。

3、簡易な融資制度

=住信SBIネット銀行はAIを活用した審査を行い、利用履歴に基づいた借入条件を企業に毎月提示する。

=GMOあおぞら銀行はクラウド会計ソフトを手掛けるFreeeと連携し、入出金データに基づく審査で1000万円を上限とする融資サービスを開始。

~デメリット~

1、まとまった金額の融資は難しい

=現状では数千万、数億単位の融資は難しい。

2、信用力の強化にはつながらない

=メインバンクはネット銀行よりメガバンクや地銀大手の方が他行取引に良い影響を与える。

経営者が心がけるべきこと

ネット銀行をメインバンクとすることにはデメリットもありますが、うまく活用することでコスト削減やデジタルサービス連携による売上拡大など、中小企業経営に大きなメリットをもたらします。

ネット銀行側も、例えば楽天銀行が中長期ビジョンで表明しているように、今後は個人ビジネスだけでなく法人ビジネスでもデータやテクノロジーを駆使してサービスを強化する方針です。

これからの起業では親身な地域金融機関+便利なネット銀行、両方同時に取引開始することをスタンダードとして考えると良いかもしれません。