金融機関と不祥事

金融機関の不祥事と言えば、スルガ銀行の不正融資やかんぽ生命の不正契約が社会的に大きな問題となりましたが、今回は職員による着服・詐取等の不祥事について取り上げたいと思います。

金融機関ではその仕事柄、着服などの不祥事が発生しやすく、厳しい社内ルールを設けながら運営をしていますが、それでもルールをすり抜けて多くの不正が行われています。

金融機関職員による不祥事実例

一、営業担当者が顧客の定期預金等を着服

主に外回りの営業担当者に多いのが、取引先とのやりとりの中で不祥事を起こすパターンです。

顧客に虚偽の説明をする等で署名捺印させたり、書類を偽造するなどし定期預金の中途解約や預金の出金により着服をします。

着服事案では、外部取引先と単独で接触する営業担当者の着服が最も多い傾向にあります。

【令和4年の不祥事例】

・顧客から預かった現金と同額の定期預金証書を偽造した播州信金の元職員が3400万円を詐取。

・顧客の預金を無断で解約した中日信金の元職員が約750万円を着服。

二、窓口や出納担当者による着服

お金を直接扱う窓口担当者や出納担当者に多いのが金庫やATMから着服するパターンです。

支店内では日頃から様々な現金検査が実施され、厳しく管理されているので、渉外担当者の不祥事と比較すると件数は少数ですが、それでも不祥事はなくなりません。

【令和4年の不祥事例】

・出納担当の管理職だった高知信金の元職員が現金4100万円をATMに補充したと見せかけて着服。

三、その他の様々な着服パターン

上記以外でも様々な手法で着服・詐取が行われています。

【令和4年の不祥事例】

・契約者から財産移転を相談された日本生命の元職員が「いい方法があるから現金を預かりたい」と言ってそのまま1億3800万円を詐取。

・友人知人を含む顧客53名の名義を用いて信組が提供する消費者ローンを繰り返し申し込んだ香川県信組の元職員が2億4000万円を詐取。

・虚偽の住宅ローン申込書を提出した北海道信金の元職員が、引き出した融資金3380万円を詐取。

・実際は手数料無料であるゼロゼロ融資の手数料などの名目で京都中央信金の元職員が約32万円を詐取。

経営者が心がけるべきこと

着服・詐取等の被害を避けるためには、できるだけ現金の授受を減らして振込を利用し、普段から通帳履歴等で不審な入出金がないかチェックすることが重要です。

現金の受け渡しには不祥事のリスクがつきまといます。

金融機関の担当者に対しても、極力、現金の受け渡しはせずに振込で対応しましょう。

金融機関の不祥事は「顧客からの問い合わせで発覚」というパターンが非常に多くなっています。

逆に言うと、問い合わせがなければ不祥事が続いていく可能性が高くなります。

10年以上に渡る長期着服事案もありますが、その分被害金額は大きくなります。

定期的に通帳や証書を確認することを心がけ、不審点は速やかに金融機関へ問い合わせましょう。