金融機関におけるDX
DXの定義は難しいのですが、「デジタル技術を利用して事業を大きく変化させること」が一般的な解釈と言えるでしょう。
人工知能(AI)、自動運転、キャッシュレス決済、リモートワーク等がその代表例です。
我が国の金融機関においてもDXの動きが加速しています。
三井住友フィナンシャルグループの中期経営計画や三菱UFJフィナンシャルグループのパーパス(存在意義)にはもはや「金融」「銀行」の文言を入れておらず、各行はDXにより銀行そのものを変革することを打ち出しています。
地方においてもスマートフォンアプリを活用した接客や、取引先のデジタル化支援を積極的に進めることで、経済産業省から「DX認定事業者」に認定される地方銀行が増加しています。
DXの一例がシステム運用です。
金融機関の「心臓部」である勘定系システムにクラウドを採用する金融機関が増えています。
基幹システムの外部連携はセキュリティーや障害時の対応に懸念がある一方、サービスの機動的な提供やコスト削減が期待できます。
北国銀行・山梨中央銀行・福島銀行・西京銀行などが、マイクロソフト・グーグル・アマゾンが提供するクラウドシステムへの移行を決めています。
融資手法にも変化が見られます。
最近では広島銀行が「ひろぎんビジネスポータル」と呼ばれるネット完結型の融資サイトを開設しました。
融資可能額や利率を人工知能(AI)が過去の入出金等から算定して、最短で2営業日以内に振り込みが行われる仕組みです。
DX人材の確保
金融機関がDXを進める中で、問題となるのが人材の確保です。
三菱UFJ、三井住友、みずほのメガバンク3行は2023年春の新卒採用を前年比13%減の1,100人程度にする予定です。
この人数は2018年の三分の一、2016年(5,000人以上)から比べると何と8割減となります。
各行は店舗の統廃合、事務の効率化などに踏み込みながら人員削減を加速させているのです。
一方で、金融工学やシステム関連の専門人材については採用を強化しています。
しかしこれらの人材は業界を問わない激しい争奪戦が繰り広げられています。
デジタル人材はオープンでフラットな組織を好み、堅苦しい銀行の社風を敬遠する傾向もあるため、どの金融機関も即戦力の確保には苦戦しているようです。
中小企業とDX
ここで中小企業のDX対応について考えたいと思います。
大企業でもデジタル人材の確保が難しいなか、中小企業が即戦力を採用できる可能性は非常に低いと考えざるを得ないでしょう。
そうであれば、今の人材を教育することが重要です。
アプリの導入や活用を任せてみたり、日常業務におけるパソコントラブルを自ら解決させたり、まずは社員の基礎的なスキルや知識を少しずつ向上させましょう。
社内のITリテラシーを高めていくことで、DXに対応できる体制を整えていくことができます。
DXは今後大きな投資が見込まれる分野でもあり、その波に乗ることでビジネスが大きく成長する可能性を秘めているのです。