経営者保証の見直し

2022年12月、経済産業省と金融庁・財務省は、経営者個人が会社の連帯保証人になる「経営者保証」の改革プログラムを正式に発表しました。

まず2023年3月から創業5年以内の企業を対象に経営者保証を不要にする信用保証制度が、さらに2024年4月からは創業5年超の企業も経営者保証の解除を選択できる信用保証制度が始まります。

金融機関には融資先企業の営業年数に関わらず顧客への説明、説明内容の記録、及び金融庁への報告を義務付けることで経営者保証を実質的に制限する方針です。

これまでも経営者保証を減らす試みはありましたが、現時点では経営者保証をつけない中小企業向け融資は全体の約3割にとどまっており、今回の見直しは創業や事業承継、事業展開の加速につなげる狙いがあります。

金融機関からの視点

これまで金融機関は中小企業と経営者を一体として捉え、経営者個人の金融資産・所有不動産や収入等を勘案しながら企業分析や融資判断を行ってきました。

中小企業への融資で経営者保証を求めることはほとんど常識だったと言えます。

しかし今後は経営者保証に過度に依存することなく、事業の可能性や経営者の能力を目利きしてリスクをとりながら資金を供給する、金融機関本来の役割が一層求められます。

金融機関が委縮して、融資姿勢が慎重になりすぎては元も子もありません。

金融機関には今回の改革プログラムを機会に、自らの意識改革もぜひ期待したいところです。

経営者からの視点

これまで中小企業経営者は連帯保証人として、企業が返済困難となれば私財を差し出し、最悪の場合は自己破産に陥るケースもありました。

今回の見直しで経営者保証を外すことができればその不安は大きく軽減されます。

そうなれば起業や事業展開をより大胆かつスピーディに行うことができるでしょう。

但し経営者保証なしの融資を受ける場合は「法人と個人の資産の分離」や「一定の収益力・返済能力」など、いくつかの条件を満たす必要があります。

新たに「(有利子負債がキャッシュフローの何倍あるかを示す)EBITDA有利子負債倍率が15倍以内」「減価償却前の経常損益が2期連続赤字でない」といった中小企業にはなかなか高いハードルも設けられる予定です。

これからは経営者も自社の財務状況をしっかり把握して、その状況を改善するための不断の努力が求められることになるでしょう。